【胸キュン♡プチ恋愛小説】空から届いたメッセージ~最後の贈り物~(完)
2025/01/29
あらすじ:
学生時代の恋人・篠原大輝を突然の事故で失った篠原茉莉。彼を失った喪失感から立ち直れないまま、茉莉は日々を過ごしていた。大輝との思い出に縛られ、未来への一歩を踏み出す勇気を持てない茉莉だったが、ある日、友人に誘われた食事会で幼なじみの緒方奏と再会する。
奏の優しさに触れ、少しずつ心を開き始める茉莉。しかし、心の奥には大輝を忘れることへの罪悪感と、また大切な人を失うのではないかという恐れが根強く残っていた。そんな中、茉莉のもとに大輝からの「最後のメッセージ」が・・・。
過去の痛みと向き合いながら、前を向いていく切ない感動ストーリー。
主な登場人物
高瀬 茉莉(たかせ まり)
25歳のOL。学生時代に付き合っていた彼・涼介を交通事故で失い、心に大きな傷を抱えたまま日常を送る。表面上は明るく振る舞っているが、誰にも心を開かず、恋愛も避けている。
緒方 奏(おがた かなで)
茉莉の幼なじみであり、学生時代から彼女に好意を抱いていたが、涼介の存在を知って身を引いた。現在は医師として働いており、茉莉と偶然再会したことで再び彼女を支えようと決意する。
篠原 大輝(しのはら だいき)
茉莉の学生時代の恋人。明るく頼もしい性格で茉莉に多くの影響を与えた。茉莉の前に現れる不思議な「メッセージ」の形で彼女の背中を押す存在となる。
目次
プロローグ
初夏の柔らかな風が湖面を撫でる静かな午後。湖畔のベンチに座る篠原茉莉は、目を閉じてそっと息を吐き出した。耳に届くのは波の穏やかな音と風に揺れる木々のざわめき。ここは茉莉が学生時代から何度も訪れた、大切な場所だった。
「大輝……」
その名前を口にすると、胸の奥がぎゅっと締め付けられる。二年前の冬、大輝は交通事故で突然この世を去った。未来を語り合い、夢を共有した相手だった彼を失った日から、茉莉の時間は止まったままだった。
当時はすべてが壊れたように感じた。目に映る景色も、耳に届く音も、全てが色を失い、音を失い、ただ無味乾燥な現実だけがそこにあった。茉莉は毎日仕事に追われることで、心の空虚さを埋めようとしていたが、それは一時的な逃避でしかなかった。
しかし、この湖畔だけは違った。ここは彼と共に過ごした思い出が詰まった場所であり、同時に彼を失った現実を突きつけられる場所でもあった。茉莉は何度も足を運び、大輝との記憶にすがりついていた。忘れたくない。忘れてはいけない。そんな思いが彼女をこの場所に引き寄せた。
そんな彼女にとって、今日もまた同じ日常の延長線上にある一日だと思っていた。しかし、この日を境に茉莉の人生が少しずつ変わり始めることになる。
第一章:「止まった時間」
茉莉は、今日も職場のデスクに向かっていた。目の前には整理しきれない書類の山が積まれている。けれど、集中しているように見えるその姿は、ただ忙しさに身を預けているだけだった。
大輝を失ったあの日から、茉莉の時間は止まっていた。
大学時代の恋人だった篠原大輝。無邪気な笑顔、困ったときに見せる少し照れたような表情、そして真剣な眼差し――どれも今も茉莉の中で鮮明に残っている。交通事故で突然命を奪われた彼の不在は、茉莉の心に大きな穴を空けた。その穴は、いくら仕事に打ち込んでも埋まることはなかった。
仕事終わりの帰り道、茉莉は夜空を見上げた。星は輝いていたが、それを美しいと思う気持ちすら薄れていた。友人たちの誘いを断り続けた結果、プライベートの時間はますます孤独なものになっていく。それでも茉莉は、無理に誰かと過ごすより一人で大輝を思い出す方が心地よいと感じていた。
そんなある日、職場の同期で仲の良い友人・奈央から強引に食事会に誘われた。
「茉莉、このままじゃもったいないよ!せっかくの金曜夜なんだから、一緒に楽しく過ごそうよ。」
「でも、私は別に……」と断ろうとする茉莉に、奈央は真剣な表情で言った。
「茉莉、自分のことを大切にしないと。少しでも外に出て、新しい空気を吸った方がいいよ。」
奈央の言葉に押される形で、茉莉はしぶしぶ参加を決めた。正直、気が進まなかったが、これ以上断り続けるのも悪い気がした。
その食事会は、奈央が手配した小さな居酒屋で開かれた。そこには数人の顔見知りと、初めて会う人たちが混ざっていた。茉莉はあまり話に加わらず、適当に相槌を打ちながら飲み物を口に運んでいた。
すると、扉が開いて、一人の男性が入ってきた。
「遅れてごめん。」
その声を聞いて、茉莉は顔を上げた。そこに立っていたのは、幼なじみの緒方奏だった。
「奏……?」
茉莉が名前を口にすると、彼も驚いたように目を見開いた。
「茉莉、久しぶりだね。」
中学生以来会っていなかった奏は、大人びた雰囲気をまとっていたが、その柔らかな笑顔は変わらなかった。
奏は茉莉の隣の席に座り、自然と二人で話す時間が増えていった。彼は仕事の話や、最近引っ越してきたことなどを穏やかに話した。茉莉は久しぶりに、自分が誰かとリラックスして話していることに気づいた。
「茉莉、元気そうでよかった。」
奏の言葉に、茉莉は小さく微笑んだ。だが、その胸の奥には、どうしても拭い去れない罪悪感が広がっていく。
『大輝を忘れてしまうのは、裏切りなんじゃないか。』
その思いが茉莉の中で渦巻き、せっかく楽しい時間を過ごしているはずなのに、心が重くなる。奏の優しさが温かければ温かいほど、自分が大輝を忘れてしまいそうで怖かった。
食事会が終わり、奈央と帰り道を歩く途中、奈央がふと振り返った。
「奏くん、なんだか茉莉のことすごく気にしてるみたいだったね。」
「そんなことないよ。ただ久しぶりに会っただけ。」
茉莉はそう言って笑おうとしたが、その笑みはどこかぎこちなかった。奏の姿を思い浮かべるたびに、心が揺れる自分がいる。それを認めることが、大輝への裏切りになるようで、茉莉は目を閉じた。
その夜、ベッドの中で茉莉は大輝の写真を手に取り、しばらく見つめていた。
「大輝……どうすればいいのかな。」
写真の中の彼は何も答えない。ただ、茉莉の心の中では、その微笑みが優しく彼女を包み込むように感じられた。
第二章:「消えないメッセージ」
初夏の柔らかな陽射しが差し込む昼下がり、茉莉はスマートフォンを手にカフェでひと息ついていた。目の前には、彼女が頼んだラテアートが施されたカップがあるが、視線は画面に釘付けだった。
日常的に届く通知の数々に目を通していると、不意に見覚えのある名前が浮かび上がる。
「篠原大輝」
一瞬、心臓が止まるかのような衝撃を覚えた。画面を凝視し、手が震えた。
しかし、再び確認しようとすると、そこには何も表示されていなかった。
「見間違い…?」
自分に言い聞かせるように呟くが、胸の鼓動は収まらなかった。大輝の名前を目にした瞬間、彼の笑顔が鮮明に蘇ったのだ。
その晩、茉莉はソファに座り込みながら、頭を抱えた。スマホを手に取り、通知の履歴を確認するが、やはり何もない。疲れているのだろうと自分に言い聞かせようとするが、どうしても心に引っかかる。
さらに追い打ちをかけるように、眠りについた茉莉の夢の中で、大輝の声が聞こえた。
「幸せになってほしい。」
その言葉が茉莉の耳元に優しく響く。彼の面影がぼんやりと浮かび上がり、茉莉は泣きそうになる。目が覚めたとき、彼女の頬には涙が伝っていた。
翌日、出勤の途中でもその出来事が頭を離れなかった。茉莉は駅のホームで立ち止まり、ふとスマホを開いてみた。ホームの雑踏の中でも、彼の声が耳元で聞こえた気がした。
「こんなの、おかしいよ…」
駅でたまたま茉莉を見つけ声をかけてきた奏と向き合った。
「茉莉?顔色が悪いようだけど、大丈夫?」
柔らかくも心配そうなその言葉に、茉莉の中の緊張が少しだけ緩む。
「…なんでもないの。ただ少し疲れてるだけ。」
そう答える茉莉に、奏はそれ以上無理に聞こうとしなかった。ただ、茉莉の話を待つように穏やかに微笑む奏の姿が、彼女の心にわずかな安らぎを与えた。
奏の優しさに触れた夜、茉莉はベッドに横たわりながら考えていた。夢の中で大輝の声を聞いたこと、スマホの通知に彼の名前が浮かんだこと。これらが偶然で片づけられるものではないように思えてならない。
それでも、現実と向き合うことが必要だと頭では分かっていた。茉莉はふと、スマホの画面を見つめる。そして、通知を開くわけでもなく、ただただ待っている自分に気づいて、苦笑いを浮かべた。
「大輝のことを忘れたくない。でも…」
その言葉の続きを言葉にすることはできなかった。
奏の姿が頭をよぎる。その優しさと静かな支えが、茉莉の心を少しずつ溶かしているのを感じていた。しかし、彼に寄りかかることで、大輝を忘れてしまうのではないかという恐れもまた、茉莉を縛りつけていた。
そんな葛藤の中で、茉莉は再び眠りに落ちる。今度の夢には、彼の声も姿も現れなかった。ただ、朝目覚めたとき、心の中に残ったのは、大輝の言葉の余韻だった。
「幸せになってほしい。」
そのメッセージが何を意味するのか、まだ分からない。それでも、茉莉は少しずつ、その意味を探るために動き出そうと感じ始めていた。
第三章:「動き出す心」
それからというもの、茉莉は奏と頻繁に連絡を取るようになった。週末の午後、奏の提案でカフェで会うことになった茉莉は、ほんの少し緊張しながらも楽しみな気持ちを抱いていた。奏との会話は自然で居心地がよく、大輝のいない静寂の中に響く新しい音のようだった。
カフェの窓際の席に座った二人は、温かな日差しに包まれながら穏やかに話し始めた。奏は、茉莉の好きな映画や音楽の話題を出し、それが大輝との思い出につながることにも気を配りながら話を進めた。茉莉はその優しさに少しずつ心が解けていくのを感じた。
「茉莉がこんなに映画が好きだったなんて知らなかったな。」
奏が笑顔でそう言うと、茉莉も自然と微笑んだ。
「大学の頃は、よく大輝と一緒に観に行ってたの。でも最近は全然観てなくて。」
その言葉が自然に出た瞬間、茉莉の胸に小さな痛みが走った。自分から大輝の話をするのは久しぶりのことだった。だが、奏は何も言わずにうなずき、茉莉の言葉を受け止めてくれた。
その帰り道、奏は駅まで茉莉を送る道中でふと口を開いた。
「茉莉、無理に前を向かなくてもいいんだよ。大輝さんとの思い出は、ずっと大切にしていいものだと思う。」
その言葉に、茉莉は立ち止まり、振り返った。
「奏くん、どうしてそんなに分かるの?」
奏は少しだけ空を見上げてから言った。
「僕も昔、大事な人を失ったことがあるんだ。そのとき、自分を責めてばかりだった。でも、ある人に言われたんだよ。『その人が大切なら、その思い出をちゃんと抱きしめながら進めばいい』って。」
茉莉は奏の真剣な眼差しを見つめ、胸が熱くなるのを感じた。自分が抱えている罪悪感や恐れが、少しだけ和らいだ気がした。
それでも、茉莉の中には大輝を失ったトラウマが根深く残っていた。夜、一人で部屋にいるとき、ふとした瞬間に不安が押し寄せてくる。
「また、大切な人を失うかもしれない……。」
その思いが茉莉を縛りつけていた。奏の優しさに触れるたび、幸せを感じる自分がいる一方で、その幸せを許していいのかという葛藤が彼女を苦しめた。
ある夜、茉莉は思い切って奏にその気持ちを打ち明けることにした。
「奏くん、私……怖いの。また誰かを大切に思うことが。大輝を失ったときの痛みを、もう一度味わうなんて、耐えられない。」
奏は茉莉の目をじっと見つめ、真剣な表情で答えた。
「その気持ちは自然なことだよ。でも、大輝さんもきっと、茉莉さんに幸せでいてほしいと思ってるはずだよ。それに、もし茉莉さんがまた傷つくことがあったとしても、僕がそばにいるから。一人で抱え込まないでほしい。」
その言葉に、茉莉は涙が溢れるのを止められなかった。自分の弱さをさらけ出しても、それを受け止めてくれる存在がいることが、茉莉にとってどれほど心強いことか初めて知った。
翌朝、茉莉は少し晴れやかな気持ちで目を覚ました。窓の外には柔らかな光が差し込み、心の中に小さな希望の種が芽生えているように感じた。大輝との思い出を大切にしながらも、新しい一歩を踏み出してみよう。茉莉はそう決意し、朝の静けさの中でそっと呟いた。
「ありがとう、大輝。私はちゃんと前に進むよ。」
その日から、茉莉は少しずつ自分の殻を破り始めた。奏との時間は、茉莉の心を動かし、新しい未来への扉を開きつつあった。
第四章:「大輝からの最後の贈り物」
ある静かな夜、茉莉は仕事を終えて帰宅し、ソファに身を沈めた。疲れた心を癒すように、いつものようにスマホを手に取る。だが、ふと画面に目を落とした瞬間、息が止まった。通知欄に表示されていたのは、大輝の名前だった。
「大輝……?」
驚きのあまり、思わず声に出してしまった茉莉は、恐る恐る画面を開いた。しかしそこには、何も残されていない。ほんの一瞬だけ、見間違えたのだろうか? それとも何かの錯覚だろうか。
茉莉は深呼吸をし、冷静になろうと努めた。しかしその夜、眠りにつくと、夢の中で再び大輝の声が聞こえた。
「茉莉、ありがとう。僕のことをいつまでも想ってくれていて。でも、もう充分だよ。」
その声は懐かしくも優しく、茉莉の胸に深く響いた。夢の中の大輝は、以前と変わらない笑顔で茉莉を見つめていた。そして続ける。
「前に進んで。君の幸せを願っているから。」
その言葉に茉莉は涙を流した。夢から覚めてもその感触は鮮明で、まるで現実のようだった。彼の言葉は、茉莉が心の奥底でずっと求めていた「許し」のように感じられた。
翌朝、茉莉は窓辺に立ち、静かに夜明けの空を見上げた。大輝が残してくれたメッセージの意味を考えながら、彼がいつも見守ってくれているような気がしてならなかった。
その日、茉莉は奏と約束していたランチに出かけた。最近は仕事の合間を縫って、二人で過ごす時間が増えていた。奏の穏やかな気遣いに触れるたびに、茉莉の心は少しずつ軽くなっているようだった。
ランチの後、奏は真剣な表情で茉莉に話しかけた。
「茉莉、少し話したいことがあるんだ。」
二人は近くの公園のベンチに腰を下ろした。周囲の木々が風に揺れ、穏やかな時間が流れる中、奏が口を開いた。
「茉莉、僕は君がどれだけ大輝さんのことを大切に思っているか、ずっと見てきた。でも、もし君が少しでも前に進む気持ちがあるなら……僕は君と一緒に歩んでいきたいと思っている。」
その言葉に茉莉は驚きとともに胸が熱くなった。奏の気持ちは、言葉ではなく行動を通じて何度も伝わってきていた。だが、今の自分にその思いを受け止めることができるのだろうか。
茉莉は一度深呼吸をし、静かに答えた。
「奏くん、ありがとう。でも……もう少しだけ時間をもらえるかな。私、まだ自分の気持ちに整理がついていなくて。」
奏は少しだけ目を伏せた後、優しい笑顔を浮かべた。
「もちろんだよ。茉莉のペースでいい。僕は待ってるから。」
その言葉に、茉莉は心から感謝した。自分の気持ちを急かさず、見守ってくれる奏の存在が、どれほど大きな支えになっているのか、改めて感じた。
夜、茉莉はベッドの中で、スマホの画面をそっと見つめた。大輝の名前が通知に表示された瞬間を思い出しながら、心の中で彼に語りかけた。
「大輝、ありがとう。あなたの言葉がなかったら、私はきっとずっとここに立ち止まったままだった。でも、私は少しずつ進んでみるね。あなたが背中を押してくれたから。」
瞼を閉じると、大輝の優しい笑顔が浮かんだ。その笑顔に「さようなら」と告げるのはまだ少し早いかもしれない。それでも、茉莉は確かに自分の未来に向けて歩み始めていた。
大輝からの最後の贈り物。それは、茉莉が新しい幸せを手にするための勇気だった。
エピローグ
湖畔の朝は静かだった。夜露に濡れた草が朝日を受けてキラキラと輝いている。茉莉はベンチに座り、ゆっくりと息を吸い込んだ。空気はひんやりとしていて心地よく、目の前には穏やかに揺れる湖面が広がっていた。
茉莉はそっと目を閉じ、大輝の姿を心の中に描いた。思い出の中の彼はいつも優しく微笑んでいる。もう、あの笑顔に触れることはできないけれど、その存在は彼女の中で確かに生き続けていた。
「ありがとう、大輝。」
心の中でそう呟くと、茉莉の胸にかすかに温かさが広がった。それは、彼との思い出がもはや彼女を縛るものではなく、支えるものになった瞬間だった。
「お待たせ。」
振り返ると、奏が少し息を切らしながら駆け寄ってくる姿が見えた。茉莉は自然と微笑み、立ち上がった。
「おはよう、奏くん。」
奏は茉莉の隣に立つと、彼女の顔をじっと見つめた。少しの間、何も言わずにその視線が交わされた後、奏が静かに口を開いた。
「茉莉さん、本当に大丈夫?」
その問いに、茉莉は一瞬だけ目を伏せたが、すぐに顔を上げて小さく頷いた。
「うん、大丈夫。奏くん、ありがとう。今の私はもう、前を向いて歩けるよ。」
その言葉を聞いて、奏の表情が柔らかくほころんだ。そして、彼は茉莉に手を差し出した。
「じゃあ、一緒に歩こうか。」
茉莉は少し照れながらも、その手を取った。奏の手は温かくて力強かった。二人は湖畔の小道を並んで歩き出した。
朝日が二人の背中を照らしている。茉莉はふと足を止め、湖面を見つめた。その瞳には決意と希望の光が宿っていた。
「私ね、これからも大輝のことを忘れない。でも、それと同時に新しい幸せを見つけていきたいって思うの。大輝も、きっとそれを望んでくれていると思うから。」
奏は茉莉の言葉を聞き、優しく微笑んだ。
「茉莉さんがそう思えるようになったのなら、それが一番の証だね。大輝さんもきっと安心してると思う。」
二人はもう一度手を繋ぎ、ゆっくりと歩き出した。
湖畔を包む静けさの中、鳥のさえずりが聞こえる。その音が二人の未来を祝福しているように感じられた。
「奏くん。」
「うん?」
「これからも、一緒に歩いてくれる?」
その問いに、奏は迷うことなく頷いた。
「もちろん。どんな時も、茉莉さんの隣にいるよ。」
茉莉はその言葉に微笑みを返し、手を握り返した。
朝日がますます輝きを増し、二人の影を長く伸ばしていく。茉莉と奏はその光の中へと足を踏み入れた。
これからどんな未来が待ち受けているのかはわからない。それでも、二人で歩むその道が輝きに満ちたものになるだろうと、茉莉は確信していた。
物語はここで幕を閉じる。しかし茉莉と奏の新たな人生は、今まさに始まったばかりだった。明るい光の中で、二人の歩みは確かに続いていく。
最後までごらんいただきまして、ありがとうございました!
フィクションですが、『亡くなった彼から電話がかかってきてさよならを言われる』という夢を見た実体験を参考にしてみましたが…当時の悲しみ等を描きすぎると重くなってしまうかもと思ってしまい、少し淡々と描きすぎてしまったかもしれません。
彼を忘れられずに立ち止まっている方の背中を押すまではいかなくても、前を向けるきっかけにでもなれたらと思います。
次回作もお楽しみに!
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