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【胸キュン♡プチ恋愛小説】推しの隣で花咲く恋(完)

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【胸キュン♡プチ恋愛小説】推しの隣で花咲く恋(完)

【胸キュン♡プチ恋愛小説】推しの隣で花咲く恋(完)

2024/12/25

ジャンル: 推し活とリアルな恋愛
約17分(約8,500文字)

あらすじ:

35歳、独身、仕事もそこそこ順調で大きな悩みはない美咲の唯一の生きがいは、アイドルグループ「Luminous」の春翔。仕事のストレスも、友人からの結婚の勧めも、彼の笑顔や歌声で吹き飛ばしてきた。

そんな美咲が、推しグループの期間限定カフェで出会ったのは、春翔にそっくりな男性・悠斗。推しに似ているという理由だけで興味を抱くが、彼との交流を重ねるうちに、美咲の中でリアルな恋愛感情が芽生え始める⁉

推し活とリアルな恋愛の間で揺れ動きながら、美咲が選んだ未来とは――。
夢中になることの素晴らしさを描いた、大人の等身大ラブストーリー。

主な登場人物

高梨 美咲(たかなし みさき)35歳
広告代理店で働く独身女性。
仕事はそこそこ順調だが、恋愛には遠ざかっている。
アイドルグループ「Luminous」の春翔(しゅんと)の大ファンで、推し活が生きがい。友人や職場の同僚から恋愛や結婚についてアドバイスを受けるが、「推しがいれば十分」と受け流してきた。しかし、リアルな恋愛と向き合う中で、自分の気持ちや未来に向き合うことになる。

桐生 悠斗(きりゅう ゆうと)
36歳。アパレル関連のフリーランスデザイナー。
美咲が訪れた期間限定カフェで偶然出会う男性。どこか春翔に似たルックスを持つが、落ち着いた雰囲気と誠実な性格が魅力。推し活には疎いが、美咲の話を興味深く聞き、理解しようとする優しさがある。彼もまた恋愛に慎重だが、美咲との出会いを通じて新たな関係を築こうと努力する。

春翔(はると)
アイドルグループ「Luminous」のセンター。
美咲が「人生を輝かせてくれる」と感じる存在。ライブやSNSでの発言から「夢中になることの大切さ」を教えてくれる。物語全体を通して美咲の人生観に影響を与える象徴的なキャラクター。

佐伯 奈央(さえき なお)
美咲の推し活仲間。
美咲と同じく「Luminous」のファンで、お互いの悩みを語り合う良き友人。美咲のリアルな恋愛に対して背中を押す役割を担う。

宮田 香織(みやた かおり)
岬の同僚。既婚者で二児の母。
美咲のことを心配し、時々恋愛や結婚についてアドバイスをする。現実的な視点を持ち、美咲に「家庭を持つ幸せ」について教える役回り。

目次

    推しに捧げた恋心

    35歳の佐藤美咲(みさき)は、オフィス街の一角にある大手企業で働いていた。仕事は事務職で、部署の中でも重要なポジションにいるわけではないが、周囲からの信頼は厚い。ミスをしない堅実な仕事ぶりで、上司からの評価も悪くない。ただ、それ以上でもそれ以下でもない“普通”の日々が続いていた。

    彼女の本当の生きがいは、仕事の後や休日に全力で楽しむ“推し活”だった。美咲が熱中しているのは、今大人気のアイドルグループ「Luminous」。5人組のボーイズグループで、その中でもセンターを務める春翔(はると)は、彼女の心の中で“唯一無二”の存在だった。

    春翔は、美咲にとって理想の男性そのものだった。完璧な笑顔、甘く透き通る声、ステージで見せる堂々としたパフォーマンス。それに、バラエティ番組での無邪気な振る舞いや、SNSに投稿される素の表情――そのすべてが、美咲の疲れた心を癒してくれた。

    「リアルな恋愛なんて、もう必要ないかも」

    彼女がそう思うのも無理はなかった。大学時代に付き合っていた彼氏と別れて以来、恋愛からはずっと遠ざかっていた。社会人になってからは忙しさを理由に出会いを避け、30代を過ぎる頃には、恋愛の優先順位はすっかり低くなってしまった。

    それでも寂しいとは思わなかった。推しの笑顔を見るだけで心が満たされ、ライブに行けば非日常の世界に浸れる。それが何よりの幸せだった。


    「もう一回このシーン観てみようっと!」

    私はソファに座り、テレビ画面に映るLuminousのライブ映像に目を輝かせた。推しである春翔がセンターで踊る姿を見ていると、仕事で疲れた体も一瞬で元気になる。

    春翔は、Luminousの中でも断トツのビジュアルと歌唱力を誇るアイドル。笑顔が眩しい上に、努力家でファン思い。そんな彼を推さずにはいられない。

    「やっぱり春翔、かっこいいなぁ…」

    一人ごとをつぶやきながら、お気に入りのシーンを何度も巻き戻す。最近は毎晩これが日課だ。


    現実とのギャップ

    推し活に没頭している一方で、現実の私は35歳の独身。恋愛なんてもう何年もしていない。友達には「またライブ行ってるの?そろそろ現実を見たら?」なんて冗談半分で言われるけど、別に気にしていない。

    だって、推しは裏切らないし、いつだって私を元気にしてくれる。

    でも、ふとした瞬間に思うことがある。例えば、友達の結婚式に呼ばれたときや、休日に一人で過ごすとき。

    「私、このままでいいのかな…?」

    その考えを振り払うように、スマホを手に取りSNSを開く。推し活仲間がアップしているライブレポートや最新情報を見ていると、モヤモヤした気持ちはすぐにどこかへ消えていく。


    特別なカフェのオープン

    そんなある日、私のSNSに衝撃的なニュースが飛び込んできた。

    「Luminousの期間限定カフェ、オープン決定!」

    これは行かないわけにはいかない! すぐに推し活仲間に連絡を取り、一緒に行く計画を立てた。推しの特別メニューや限定グッズがあると聞くだけで、心が躍る。

    「明日、早起きしなきゃな…」

    そうつぶやきながらベッドに入った私は、すでにカフェでのひとときを想像してワクワクしていた。


    推しと繋がる場所

    翌朝、早起きして出かけたカフェは、期待以上の空間だった。壁にはLuminousのメンバーの大きなパネルが飾られ、店内には推しの歌声が流れている。

    「最高…!」

    メニューには、春翔がイメージモデルのドリンクやケーキがずらりと並んでいた。迷った末に、春翔推しなら外せない「春翔スペシャル・パフェ」を注文。

    席に着き、運ばれてきたパフェをスマホで撮影していると、不意に後ろから声が聞こえた。

    「Luminous好きなんですか?」

    振り返った私は、目の前にいる男性を見て固まった。彼は、まるで――春翔そのものだった。

    第二章:推しにそっくりな彼

    突然の声に驚いて振り返ると、そこにいたのは――えっ? 春翔?

    いや、そんなはずない。ここはアイドルのカフェであって、本人が来るわけない。でも、目の前の男性は推しの春翔にそっくりだった。柔らかい茶色の髪、くっきりした目元、そして優しい笑顔。その姿に、私は完全に固まってしまった。

    「あ、すみません。驚かせちゃいましたね」

    彼は少し困ったように笑った。話しかけたのは、このカフェのことを聞きたかっただけらしい。

    「妹がLuminous好きで、付き添いで来たんです。でもメニューが全然わからなくて」

    そう言って差し出されたスマホには、推しの顔写真がずらりと並んでいた。

    「あ、あぁ、そうなんですね…」

    声が上ずるのをなんとか抑えて答える。だけど、心臓はドキドキしていた。だって、目の前にいるのは推しに激似のイケメンなんだもの。


    カフェでの偶然

    会話のきっかけはそれだけだったのに、気がつけば彼と話し込んでいた。名前は加藤悠斗(ゆうと)さん、1つ上の36歳で、アパレル関連のフリーランスデザイナーをしているらしい。推しのことには詳しくないけど、妹に付き合って動画を何本か観たらしい。

    「推しの名前、春翔くんでしたっけ?確か歌が上手くて人気なんですよね?」

    「そうです!センターで、本当にかっこいいんですよ!」

    気づけば私はいつもの推し語りモードに入っていた。悠斗さんはニコニコしながら頷いてくれるけど、内心「大丈夫かな、引かれてないかな」と不安になる。

    でも、彼は全然そんな様子はなかった。

    「好きなことに夢中になれるのっていいですよね。僕も昔、音楽にすごくハマってたから、その気持ちわかるかも」

    その言葉に、私の胸が少しだけあたたかくなった。


    推しのそっくりさん

    カフェを出ると、悠斗さんがぽつりと言った。

    「そういえば、よく言われるんですよ。Luminousの誰かに似てるって」

    「あ、やっぱり…!」

    思わず声を上げた私に、悠斗さんは首をかしげる。

    「でも、僕はそんなに似てますかね?」

    「似てるどころじゃないですよ!特に目元とか、そっくりです!」

    悠斗さんは「へぇ」と苦笑いしたけど、こっちは心の中で大興奮だった。こんな偶然ある? 推し活してる人間にとって、推しにそっくりな人に出会うなんて奇跡に近い。

    でも、同時に少しだけ心がザワついた。彼を“春翔のそっくりさん”として見てしまっている自分がいることに気づいたからだ。


    もう一度会いたい?

    その日の帰り道、私はずっと悠斗さんのことを考えていた。彼は推しに似てるだけじゃなくて、話しやすくて、どこか穏やかな雰囲気がある人だった。

    「また会いたいな」

    ふと、そんな気持ちが浮かんだ。でも、これは恋…なのかな? それとも、推しの面影を追いかけているだけ?

    自分でもよくわからないまま、私はスマホを開いて、カフェで交換した彼の連絡先を眺めていた。

    第三章:新たなドキドキ

    悠斗さんからもらった連絡先を眺めながら、私はどうするべきか迷っていた。すぐに連絡を取るべきなのか、それとも、少し時間を空けたほうがいいのか。普段、友達や推し活仲間以外と連絡を取ることなんてほとんどないから、こんなことで緊張してしまう自分が恥ずかしい。

    結局、その日は何もできずにベッドに入った。でも、次の日の昼休み、なんとなく勇気を出してメッセージを送ってみることにした。

    「昨日はありがとうございました。カフェ、楽しめましたか?」

    送信ボタンを押した瞬間、心臓がバクバクと跳ねる。返信が来るかどうかもわからないのに、なぜこんなに緊張するんだろう。


    待ちきれない返信

    仕事に集中しようとするものの、スマホが気になって仕方ない。ポケットの中で振動を感じてすぐに取り出すと、画面には悠斗さんからの返信が表示されていた。

    「こちらこそ、話を聞いてくれてありがとうございました。おかげで妹へのお土産も喜んでもらえました!」

    ほっとするやら嬉しいやらで、思わずにやけてしまう。その後も少しやり取りが続き、気づけば次の週末にご飯を食べに行く約束をすることになっていた。


    再会の日

    土曜の夜、待ち合わせ場所に現れた悠斗さんは、やっぱりどこか春翔に似ていて、私はそのたびにドキッとしてしまう。でも、話しているうちに、少しずつそれとは違う彼自身の魅力が見えてくる。

    「美咲さんって、本当にLuminousが好きなんですね。どんなところが魅力なんですか?」

    「えっと…全部です!」

    そう答えると悠斗さんは吹き出した。「全部って…ざっくりしてるなぁ」

    でも、それをきっかけに好きな曲やライブの話で盛り上がり、気づけば何時間も話し込んでいた。彼はちゃんと私の話を聞いてくれるし、興味を持って質問してくれる。その優しい態度に、私は少しずつ彼を“春翔のそっくりさん”ではなく、“悠斗さん”として意識し始めていた。


    戸惑いと期待

    家に帰った後も、悠斗さんとの会話が頭から離れない。彼との時間は楽しかったけど、だからといって恋愛に発展するかどうかはわからない。

    私はこれまで、推しに全力で向き合うことで現実の恋愛から逃げてきた。悠斗さんとの出会いは、その生活を変えるきっかけになるのかもしれない。でも、推しを追いかけている間は楽しいし、何より安全だ。リアルな恋愛には傷つくリスクが伴う。

    「また会いたいな…でも、これってどういう気持ちなんだろう?」

    悠斗さんのことを考えながら、私は少しだけ心がざわつくのを感じていた。それは、推し活では味わえなかった新しいドキドキだった。

    第4章:心の距離と推し活の境界

    悠斗とのデートが続く中、美咲の心には微妙な変化が訪れていた。
    カフェ巡りや美術館デート、散歩中の何気ない会話。悠斗はいつも自然体で、こちらを気遣うように接してくれる。そんな彼の優しさや誠実さに触れるたび、「この人ともっと一緒にいたい」という思いが少しずつ芽生えていた。

    けれど、心の奥ではまだ迷いがあった。
    「この気持ちは、本当に悠斗さん自身を好きだからなのかな?」
    「それとも……春翔くんに似ているから?」

    そんなモヤモヤを抱えながら迎えた週末、奈央との推し活の約束があった。久しぶりのライブビューイングだ。
    「やっぱり推し活最高だよね!」
    ライブ映像の中で全力で歌い、踊る春翔を見て、美咲も声援を送る。奈央と笑い合いながら過ごす時間は、いつもどおり楽しく、心が満たされていくのを感じた。

    けれど、ふと気づいた。
    「今までだったら、この瞬間が私の幸せの頂点だった。でも、悠斗さんといるときの私も、同じくらい楽しいって感じてる……」

    推し活とリアルな恋愛。それぞれの幸せが、自分の中で少しずつ重なり始めていることに気づく美咲。けれど、同時に二つをどう両立させていけばいいのか、明確な答えは見つからない。


    悠斗との再会:揺れる感情
    ライブ翌日、悠斗と会う約束があった。待ち合わせ場所の公園で待っていると、いつもどおり穏やかな笑顔を浮かべた悠斗が現れる。
    「昨日は楽しかった?ライブビューイングって言ってたよね」
    「うん、最高だったよ!推しがキラキラしてて、本当に幸せだった」
    悠斗は美咲の話を興味深そうに聞きながら、たまに頷く。彼はいつも推し活の話を否定せず、「美咲さんにとって大切なことなんだね」と言ってくれる。

    その日は近くの美術館を訪れた後、カフェでコーヒーを飲みながら話し込んだ。
    「悠斗さんは、自分が夢中になれるものってある?」
    美咲の問いに、悠斗は少し考え込んだ。
    「そうだな……昔はデザインに対してそんな気持ちがあったかも。でも最近は、仕事に追われて夢中になるって感覚を忘れてたかもしれない」
    「そっか……でも悠斗さんのデザイン、すごく素敵だと思うよ。前に見せてくれたやつ、すごく心に響いたから」

    美咲がそう言うと、悠斗は少し照れたように笑った。
    「ありがとう。美咲さんみたいに、何かに熱中してる姿を見ると、自分ももっとやってみようかなって思えるよ」

    その一言に、美咲の胸がじんわりと温かくなる。彼はいつも自分の話を否定せず受け入れてくれる。それがどれだけ安心できることなのか、最近強く感じるようになっていた。


    心の整理:奈央との会話
    数日後、奈央とカフェで推し活談義をしていたとき、美咲は自然と悠斗の話をし始めた。
    「悠斗さん、ほんと優しい人なんだけど……私、まだ迷ってるんだよね。本当に彼のことが好きなのか、それともただ推しに似てるから惹かれてるだけなのか」
    奈央はコーヒーカップを置いて、美咲の顔をじっと見つめた。
    「美咲ちゃん、それってもう答え出てるんじゃない?」
    「え?」
    「悠斗さんのことを“優しい”とか“一緒にいて楽しい”とか、そういう言葉で表現してるじゃん。推し活のときは、“かっこいい”とか“最高”とかって感じでしょ?そこが違うんだと思うよ」

    奈央の言葉はシンプルだったが、その一言が美咲の胸に深く響いた。
    「私は、悠斗さんといるとき、確かに推し活とは違う安心感や楽しさを感じてる……」

    その気持ちを大切にしたいと思う美咲。けれど、悠斗にどう伝えるべきか、まだ心の準備はできていなかった。

    第五章:揺れる告白

    悠斗との週末デートが習慣のようになってきたある日、美咲は久々に自分の気持ちに向き合う時間を作った。
    家の中は推しのグッズやライブの思い出で溢れている。見渡すたびに、「これが私の人生を支えてくれたもの」という感謝の気持ちが湧く。だけど、悠斗と過ごす時間が増えるにつれ、少しずつその中心が変わり始めているのを感じていた。

    「これって恋なのかな……?」
    推し活仲間の奈央に相談すると、彼女は笑いながら言った。
    「それって恋でしょ!でも美咲ちゃんらしいのは、ちゃんと自分で整理しようとするところだよね」
    「でも、もし悠斗さんのことを好きだとしても、それって“春翔くんに似てるから”なんじゃないかなって思っちゃうんだよね」
    奈央は少し考えたあと、静かに言った。
    「美咲ちゃん、好きになる理由なんていろいろあるし、きっかけなんてなんだっていいと思うよ。それより、今の自分の気持ちに素直になってみたら?」

    その言葉に背中を押されるようにして、美咲は悠斗との次のデートで自分の気持ちを話すことを決めた。


    週末、カフェで向き合う悠斗の顔を見た瞬間、緊張で喉が詰まりそうになる。けれど、彼の優しい目を見ていると少しずつ言葉が出てきた。

    「悠斗さん、あの……私、正直に言いたいことがあります」
    「うん、聞かせて」

    美咲は深呼吸をして、自分の気持ちを絞り出す。
    「最初に悠斗さんに会ったとき、正直、春翔くんに似てるなって思ったんです。それがきっかけで興味を持ったのは間違いありません。でも……今は悠斗さん自身のことをもっと知りたいと思ってるし、一緒にいる時間がすごく楽しいです」

    悠斗は黙って美咲の言葉を聞いていたが、やがて少し笑みを浮かべながら答えた。
    「正直に話してくれてありがとう。僕も最初は“アイドルに似てる”って言われたとき、複雑な気持ちだった。でも、美咲さんと過ごすうちに、そんなことどうでもよくなるくらい、君自身に惹かれているんだって気づいたんだ」

    その言葉を聞いた瞬間、美咲の胸の中に温かいものが広がった。悠斗もまた、美咲を受け入れてくれている。

    「これからも、ゆっくりだけどお互いのことを知っていけたら嬉しいです」
    そう告げると、悠斗は穏やかに頷き、
    「もちろん。その一歩を一緒に踏み出そう」
    と言ってくれた。

    この瞬間、美咲はリアルな恋愛を始めることへの不安が溶けていくのを感じた。推しへの愛も大切だけど、それとは別に悠斗との関係を育てていきたい――そう決意した日だった。

    最終章:選んだ未来

    クリスマスの夜、美咲は久しぶりに心がざわついていた。
    悠斗との約束は19時。場所は、二人のお気に入りになった駅前のイルミネーションがきれいな公園。彼が仕事終わりに直接来るということで、少し早めに着いた美咲は、白いマフラーをぎゅっと握りしめながら、寒さと緊張に震えていた。

    「悠斗さんに、ちゃんと気持ちを伝えよう」
    推し活の時とは違う、リアルな恋愛を始めるという決断。それは自分の生活を大きく変える一歩かもしれない。けれど、それでも悠斗と一緒に歩んでみたい――そんな思いが美咲を突き動かしていた。


    「美咲さん!」
    聞き慣れた声に振り向くと、悠斗が少し息を切らせながら走ってきた。
    「お待たせ。ちょっと遅れちゃってごめんね」
    「全然平気。お疲れさま」
    相変わらずの誠実な笑顔に、美咲は少し緊張がほぐれる。

    二人で歩き始めると、イルミネーションが瞬きながら街を彩っていた。美咲はふと立ち止まり、悠斗に向き合った。
    「悠斗さん、私……今日、ちゃんと伝えたいことがあるんです」

    悠斗は少し驚いたような表情を見せたが、すぐに優しい笑みを浮かべて「聞くよ」と頷いた。

    美咲は深呼吸をしてから言葉を紡ぎ出した。
    「最初は、春翔くんに似てるって思って、悠斗さんに興味を持ったのは事実です。でも、一緒に過ごすうちに、悠斗さんがどんな人かをもっと知りたくなって、もっと一緒にいたいって思うようになりました。推し活も私にとって大事なものだけど、それとは全然違う、大切な存在だって気づいたんです」

    言葉を絞り出すように伝えた美咲の目には、少し涙が浮かんでいた。
    「だから……私、悠斗さんのことが好きです。これからも一緒にいられたら、すごく幸せだなって思います」

    悠斗は驚いたような顔をしていたが、やがて穏やかな表情で答えた。
    「美咲さん、ありがとう。僕も同じ気持ちだよ。最初は“春翔くんに似てる”っていう君の言葉に少し戸惑ったけど、君と過ごす時間がどんどん特別になっていくのを感じてた。推し活を大切にしている君の姿が、僕にとっても刺激になってたんだ」

    美咲の目から涙が一筋流れる。けれど、それは安堵の涙だった。悠斗は、彼女のすべてを受け入れてくれている。


    その後、二人は公園のベンチに腰を下ろし、未来の話をした。悠斗は、美咲の推し活も含めたライフスタイルを尊重してくれることを約束し、美咲はそんな彼とこれからを築いていきたいと心から思った。

    「でも、一つだけ言わせて」
    悠斗が少し真剣な顔をして言う。
    「推しに負けないくらい、僕のことも応援してほしいな」
    その言葉に、美咲は思わず笑ってしまった。
    「もちろん。悠斗さんのこと、これから全力で推すね」

    イルミネーションの光が二人を包む中、美咲は新しい一歩を踏み出した自分を感じていた。リアルな恋愛を選び、悠斗と共に未来を描く――その決意は、これからの日々を輝かせてくれるだろう。

    物語はここで終わる。でも、美咲と悠斗の新しい物語は、今始まったばかりだ。

    ーFinー


    最後までご覧いただきまして、ありがとうございました!

    推し活をやめるのではなく、両立することで自分らしい幸せを見つける等身大のラブストーリーを描いてみました。
    少しでも胸キュン♡していただけていたら、嬉しいです!

    次回作は、「溺愛」をテーマにお届けしたいと思います。お楽しみに!

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