【胸キュン♡プチ恋愛小説】隣のイケメン年下くんとの恋は突然に・・・(完)
2024/12/18
ジャンル:イケメン年下男子×年上女性
読書時間:約18分(8,823文字)
あらすじ:
仕事一筋で恋愛から遠ざかっていた30代の弥生は、しつこく復縁を迫る元カレから逃れるため、新しいマンションに引っ越す。
そこで出会った隣人は、爽やかな好青年・拓海。年下である彼の無邪気な優しさとさりげない包容力に触れるたび、弥生の中に新たな感情が・・・。
「年齢なんて関係ない。大事なのは、あなたを守りたいという気持ちだけ。」
年下紳士の真っ直ぐな想いに、心を揺さぶられる胸キュンラブストーリー。
主な登場人物
一ノ瀬弥生(32歳)
- 主人公。経理担当。真面目で控えめだが、内面はしっかり者。
- 恋愛に慎重で、過去の元カレのストーカー行為で男性に不信感を抱きつつある。
- マンションに引っ越してきたばかりで、新しい生活を始めたばかり。
工藤拓海(25歳)
- 弥生の隣人で、取引先の営業マン。明るく社交的な性格で、誰からも好かれるイケメン。
- 弥生に対しては、弥生の方が年上にもかかわらず守りたいという気持ちが強く、無意識に距離を縮めていく。
- 実は女性社員からの人気が高く、彼自身はそのことに気付いていない鈍感な一面も。
小倉義人(34歳)
弥生の過去の恋人で、ストーカー気質。未練がましく弥生に近づこうとする。
目次
第一章:運命の隣人との出会い
「はあ…疲れた。」
弥生は仕事を終え、駅前のコンビニに立ち寄った。新しいマンションへの引っ越しは翌日。ここに来るのも、もう最後かもしれない。そんなことを思いながら、弁当と飲み物を手にレジへ向かった。
コンビニの扉が開き、冷たい夜風が店内に流れ込む。その瞬間、弥生の表情が固まった。
「弥生、久しぶりだな。」
振り返ると、そこにいたのは元カレの小倉義人だった。かつての恋人であり、今や弥生にとって避けたい存在そのもの。彼は何度も復縁を迫ってきていた。
「…義人。ここで何してるの?」
弥生は努めて冷静を装ったが、声が震えるのを止められなかった。
「たまたまだよ。でも良かった。弥生、俺たちやり直さないか?」
義人は微笑みながら一歩近づいてきた。
「もう終わったことだって、何度も言ったよね。」
毅然とした態度を取ろうとする弥生だが、内心では動悸が激しくなる。
「終わったなんて、俺は認めてない。俺が結婚してやってもいいって言ってるだろ!」
義人はさらに一歩近づき、弥生の腕を掴んだ。その瞬間、冷たい空気がさらに肌を刺すような感覚がした。
「やめて…放して!」
必死で腕を振りほどこうとする弥生。周囲の視線が集まるが、誰も助けてくれる気配はない。
「彼女、嫌がってるじゃないですか。」
低く落ち着いた声が響いた。
義人が顔を上げると、背の高い若い男性がレジ袋を持って立っていた。彼の鋭い目つきに一瞬気圧された義人は、つい手を離した。
「なんだお前。」
「ただの通りすがりです。でも、女性が困ってるのを放っておけない性分なんです。」
男性は義人に一歩近づき、涼しい顔で言い放った。その堂々とした態度に、弥生は思わず見入ってしまう。
「ちっ…」
義人は舌打ちをして、その場を去っていった。
「大丈夫ですか?」
男性が振り返り、弥生に声をかけた。
「あ、はい。助けてくれてありがとうございます。」
近くで見ると、彼の顔立ちは整っており、どこか爽やかさを感じさせる笑顔を浮かべている。
「いえ、偶然通りかかっただけですから。それより、あの人…大丈夫ですか?ストーカーみたいでしたけど。」
「元カレなんです。でも、ちょっとしつこくて。」
弥生は苦笑いを浮かべた。
「そうなんですね…。何かあればすぐ警察に相談してください。」
彼はそう言って軽く頭を下げた。
「…あの、本当にありがとうございました。」
「気にしないでください。それじゃ。」
そういうと男性は、そのまま颯爽と歩き去った。
帰り道、弥生は彼の顔を何度も頭に浮かんでいた。彼の頼もしげな後ろ姿も妙に心に残った。
引っ越し初日、弥生はドアの隙間から新しいマンションの廊下をちらりと覗いた。
箱詰めされた段ボールで溢れる室内と、ここでの生活が始まるんだという現実感に、少し胸が躍る。そして同時に、一抹の不安が頭をよぎった。
「やっとここまで来たけど…本当に大丈夫かな。」
元カレのしつこい復縁要請に耐えきれず、転居を決意したのは数週間前のこと。新しい環境で、これまでの煩わしさを断ち切ることを願っていた。
玄関に置かれた引っ越しの挨拶用のお菓子を手に取り、弥生は深呼吸をした。近所付き合いをしっかりしておけば、何かあった時に助け合えるかもしれない。意を決して、隣の部屋のインターホンを押す。
「はーい。」
そこに現れたのは数日前に助けてくれた男性だった。さらりとセットされた黒髪に、爽やかな笑顔が印象的だ。白いTシャツにジーンズというカジュアルな装いながら、立ち姿にはどこか凛々しさがある。
「えっ」2人とも驚いた表情を浮かべる。
「あ、あの!先日は助けていただいた方ですよね?私、隣に引っ越してきました、一ノ瀬と言います。あのときは本当にありがとうございました!これ、引っ越しのご挨拶です。」
菓子折りを差し出すと、彼は一瞬驚いたような表情を見せたが、すぐに受け取った。
「どうも、ご丁寧にありがとうございます。隣の工藤です。あの後大丈夫でしたか?」
工藤と名乗ったその男性の口調は柔らかで、親しみやすい雰囲気を醸し出していた。
「はい、今のところは大丈夫そうです。引っ越したので、家も分からないでしょうし。」
「何か困ったことがあったら、遠慮なく声をかけてくださいね。」
「ありがとうございます。そう言っていただけると安心します。」
少し会話を交わした後、弥生は部屋に戻った。だが、彼の爽やかな笑顔が何度も脳裏をよぎり、自分が少し頬を赤らめていることに気づいて小さく首を振る。
第二章:距離が縮まるふたり
引っ越しから数週間が経ち、弥生の新しい生活は徐々に落ち着きを見せていた。
しかし、元カレがいつ再び現れるかもしれないという不安は、心のどこかにくすぶり続けていた。そんな中で、隣人である工藤拓海との関係は、少しずつ変化を見せ始める。
「帰宅時間、たまたま合いましたね。」
夜の帰り道、ふと後ろから聞こえた声に振り返ると、拓海が軽く手を振りながら歩いてきた。弥生は驚きつつも、心が少し軽くなるのを感じた。
「夜道、危ないですよ。一緒に帰りましょう。」
「えっ…あ、ありがとうございます。」
拓海の気遣いに戸惑いつつも、安心感が胸に広がる。
元カレのことを知っているからこそ、彼なりに心配してくれているのだろうと考えると、申し訳ない気持ちも湧き上がる。
その帰り道、拓海は仕事の話や趣味の話を楽しそうに弥生に語った。年下らしい無邪気さを見せる一方で、相手を気遣う言葉や振る舞いに、弥生は彼がただの「若い子」ではないことを感じ始めていた。
「これ、どうぞ。」
ある日、帰宅後に弥生が拓海の部屋を訪れると、小さなタッパーを渡した。中には手作りの肉じゃがが入っている。
「お礼というほどのものではないんですけど、この間助けていただいたお礼です。」
拓海は驚いたように目を丸くしながらも、すぐに笑顔になった。
「ありがとうございます。せっかくだから、一緒に食べませんか?」
「えっ?」
「ちょうど冷蔵庫が空っぽで、どうしようか悩んでたんです。少し待ってくださいね、ビール取ってきますから。」
その誘いを断る理由が見つからず、弥生は部屋に招かれることになった。
拓海の部屋は意外にも整理整頓されていて、観葉植物やシンプルなインテリアが置かれている。弥生は内心で「ちゃんとしてるんだな」と感心しながら、テーブルに座った。
「いただきます。」
拓海が肉じゃがを一口食べると、目を輝かせながら言った。
「うまい!家庭的ですね、一ノ瀬さん。」
「そ、そうですか?でも普通の味だと思いますけど…。」
「いやいや、僕が作ったらこうはなりませんよ。次は何か教えてください!」
そんな無邪気な笑顔を見せられ、弥生は思わず微笑んでしまった。その後もお酒を飲みながら会話は弾み、気づけば時間は深夜を過ぎていた。
「一ノ瀬さん、大丈夫ですか?」
拓海が声をかけるも、弥生はソファでいつの間にか眠ってしまっていた。
「寝ちゃったか…」
拓海は、弥生の寝顔を見ていると、吸い寄せられるように思わずキスをしてしまった。
自分の行動に驚きを隠せない拓海だが、
「愛おしいって、きっとこういう気持ちを言うんだな」
仕事中は隙がなさそうな雰囲気、年上でしっかりしているようなのに、プライベートでは親しみやすく一緒に居て居心地がいい弥生に、元カレのことでほっておけない以上の感情の芽生えに気づいた瞬間だった。
翌朝、目を覚ました弥生は驚愕することになる。隣に寝ている拓海の寝顔が視界に入ったからだ。
「えっ、何これ…どうして…?」
混乱する弥生の横で、目を覚ました拓海が伸びをしながら言った。
「おはようございます。一ノ瀬さん、昨夜はとても可愛かったですよ」
「えっ?ちょっと待って」
慌てて自分の服を見る弥生。
「あはは、冗談です。何もしてないですよ。ただ、僕が出てしまった後の鍵が心配で一晩ここにいただけです。」
「そ、そうですか…。」
ホッとする一方で、彼の言葉の一部が意味深に感じられ、弥生は複雑な気持ちになった。
その日から、弥生は少しずつ拓海を意識するようになる。しかし、それを認めることができない自分もいて、心の中で葛藤が始まっていた。そんな中、仕事場で再び拓海と顔を合わせる機会が増える。
取引先の営業マンとして弥生の職場を訪れる拓海は、持ち前の明るさと爽やかさで同僚たちからも人気だった。特に女性社員の間では彼の話題で持ちきりだ。
「工藤さん、また来てるよ!」
「あの笑顔、たまらないよね~。」
そんな話を耳にするたび、弥生の胸には得体の知れないざわめきが生まれる。そして自分の気持ちに戸惑いを覚える。
「私なんかが、相手にされるわけないよね…。」
これ以上、拓海との進展するはずないなら、自分の気持ちが冷めるまで、距離を置こうと決意した弥生。
そんな思いを抱きながら、帰宅するとマンションの前で拓海にバッタリ。
「こんばんは。」
拓海からお声かけられた弥生は、
「…こんばんは」
「ちょうど良かった。今日もし良かったら、一緒に宅飲みしませんか?田舎から色々送られてきたんで、一ノ瀬さんと食べたいなって思ってたところなんです!」
「…今日は疲れてるので、すみません。」
「お疲れのところに、お誘いしてしまってすみません!今日はゆっくり休んでくださいね」
拓海がそういうと、頷いた後、すぐに部屋に向かって行ってしまった。
そんな弥生の様子がなんだか、よそよそしく感じ、
(⁇いつもと様子が違うのは、疲れるだけ?)
次の日の朝、出勤しようと家を出たら、ちょうど隣の部屋のドアも開き、
「おはようございます!体調はどうですか?」
爽やかに挨拶。その上自分のことを気にしてくれている拓海。
「…えぇ、今日一日頑張れば、明日・明後日はお休みなので、なんとか」
「そうですね、お互い今日一日頑張りましょう!駅までご一緒していいですか?」
「えっ、あっ、ごめんなさい。ちょっと急ぐので、私先に行きますね!」
腕時計を見て、少しぎこちさなを感じる弥生の返答に、弥生が自分を避けているように感じ始めていた。
(嫌われるようなこと何かしてしまったか⁇)
それでも、少しずつ彼女との距離を縮めたいという想いは止まらない。弥生を守りたい、近くにいたいという気持ちが、彼を突き動かしていたのだった。
第三章: 嫉妬と嫌がらせ
弥生と拓海が帰宅時間を合わせるようになってから数週間。職場でも取引先として打ち合わせに来る拓海との接点は続いていた。弥生は、職場で彼に会うたびに、爽やかな笑顔を振りまく拓海がいかに人気者であるかを痛感していた。
「また工藤さん来てる!ほんとカッコいいよね~。」
「営業成績もいいらしいよ。イケメンな上、将来有望株。工藤さんとこの会社では、昇進間近って噂らしいよ!」
「そんな人と付き合えるの、どんな人なんだろう?」
「アイドル並みに可愛い子とか?」
同僚たちの会話を聞くたび、弥生の胸はもやもやとした感情に包まれる。年下でイケメン、しかも仕事もできる拓海が自分に特別な関心を持つはずがない――そう自分に言い聞かせて、自分の気持ちに気付かないふりをするのに必死だった。
ある日、弥生がランチに行くため、会社を出たところで、午前中に打ち合わせに来ていた拓海とバッタリ出くわす。
「あっ、一ノ瀬さん!今からランチですか?」
「えぇ。」
「僕もこの後お昼をとってから、帰社する予定なんですが、一緒にランチどうです?」
そんな2人の会話を聞いていた女子社員の1人が、
「工藤さん、これからランチなんですか?近くに良いお店ありますよ♪」
弥生の存在は完全に無視し、すかさず拓海を誘う。
すると、その場に居合わせた女子社員たちが皆んな一緒に行きましょう!と詰め寄ってきた。
取引先の社員を無碍にするわけにもいかず、弥生も一緒にという雰囲気ではなさそうなと空気を読んだ拓海は弥生とのランチを諦め、女子社員たちと一緒にランチに行くことした。
拓海とのランチを終えて、戻ってきた1人が、弥生に近づいてきた。
「ねえ、一ノ瀬さん、さっきあの工藤さんから声かけられてたよね?もしかして、何かあるんじゃないの?」
「いや、そんなことないよ。」
「そうよね?工藤さんから見たら、一ノ瀬さんなんてオバさ…ってゴメンなさい」「アハハハ!」
弥生が必死に否定しても、同僚たちはからかうような笑みを浮べながら、嫌味を言ってきた。
それだけならまだ良かった。だが、それ以降、同僚たちからの冷たい視線や意地悪な言動が増え始めたのだ。
「一ノ瀬さん、これ、昨日までに処理してって頼んだやつ、まだできてないよね?」
「えっ…そんなこと聞いてないけど…。」
「ちゃんと伝えたはずだけどなあ。工藤さんとのことに夢中で仕事忘れてたんじゃないの?」
嫌味を含んだ言葉に弥生は言い返すことができず、ただ黙り込むしかなかった。
その日、拓海は昼間弥生を置き去りにする形になってしまったことを詫びようと、部屋の前で弥生の帰りを待っていた。
少し元気がなさそうな様子で帰ってきた弥生を見て、
「どうしたんですか?元カレがまた来たとか?」
拓海は真剣な表情で弥生を迎え入れたが、彼女が首を振ると少しほっとしたように微笑んだ。
「いえ、そうじゃなくて…。」
「悩みがあるなら、愚痴くらい聞きますし、俺を頼ってくれませんか?昼間の件もお詫びしたいし、少しうちで飲みながら話しませんか?」
こんなにも真剣に自分のことを心配してくれている拓海に対して、自分勝手に距離を置こうとしていたことを反省した弥生は、拓海の部屋にお邪魔することに。
拓海が原因だということは伏せて、職場の愚痴を聞いてもらうと思っていた弥生だったが、
お酒が入り、少し酔いがまわると、職場での出来事を話し出してしまった。
「…だから、工藤さんから話しかけられたことに嫌味を言われちゃった。それだけじゃなく嫌がらせみたいなこともされるようになっちゃって。」
話し終えた弥生の目には涙が浮かんでいた。拓海はその様子に心を痛めながらも、静かに言葉を選んだ。
「それって、俺のせいですよね。すみません…。」
「違うの!工藤さんが悪いわけじゃない。ただ、私が工藤さんに釣り合わないだけ…。みんなが納得するくらい若くて可愛いければ…」
弥生が慌てて否定するのを見て、拓海は少しだけ口元を緩めた。
「でも、一ノ瀬さんにそんな思いをさせるくらいなら、もう一緒に帰ったり、人前で話しかけないほうがいいのかな…。」
その言葉に弥生の胸がぎゅっと締め付けられた。
「…そんなことないです。一緒に帰るのも嬉しかったですから。」
弥生の小さな声を聞いた拓海の目が優しく細められる。そして、ふと真剣な表情に変わった。 弥生の手をそっと包み込み、
「俺、一ノ瀬さんのことが気になってます。」
それまで少し酔っていた弥生だったが、驚いて顔を上げたが、拓海の真剣なまなざしにすっかり酔いが覚め、言葉を失った。
「一ノ瀬さんを見てると、なんだかほっとけないんです。俺のこと、少しでも意識してくれるなら、もう少し俺に付き合ってもらえませんか?」
そのストレートな告白に、弥生は動揺しつつも、心の奥が温かくなるのを感じていた。
次の日、拓海の提案で2人は休日にデートをすることになる。新しい服を買いに行こうかと鏡の前で迷う弥生の姿が、どこか浮き足立っているようだった。
彼との時間が少しずつ自分にとって特別になっていることを、弥生はまだ認められずにいたが、それでも心は次の休日を待ち遠しく感じていた。
第四章:溢れる想い
休日の朝。弥生は、少し早起きして服を選んでいた。拓海との約束は午後からだが、何を着るべきかと悩んでいるうちに、時間はどんどん過ぎていく。
「こんなことで迷うなんて、私、どうかしてる…。」
結局、白のブラウスに淡いブルーのスカートという、普段より少しだけ華やかなコーディネートに落ち着いた。
約束の時間になり、待ち合わせ場所に向かうと、拓海はすでに到着していた。カジュアルなシャツにジャケットを羽織った姿は、いつも以上に爽やかで眩しい。
「一ノ瀬さん、早いですね。」
「いや、工藤さんが早いんでしょ。」
自然に笑顔がこぼれる。そんな軽口を交わしながら、2人はデートをスタートさせた。
最初は街中をぶらぶらと散策しながら、ショッピングやカフェ巡りを楽しんだ。弥生は久しぶりに、誰かとこんなにリラックスした時間を過ごしている気がした。
「一ノ瀬さん、普段こんなに笑うんですね。」
「えっ?そんなに変かな。」
「いや、すごく可愛いです。」
唐突な拓海の言葉に、弥生は思わず立ち止まった。
「…もう、そういうこと言うの、反則だよ。」
顔を赤らめながら歩き出す弥生の後ろで、拓海は少しだけ照れくさそうに笑っていた。
午後になると、拓海の提案で静かな公園に足を運んだ。桜の木々が並ぶ道を歩きながら、穏やかな風に吹かれる。
「ここ、いい場所だね。」
「気に入ってくれてよかったです。実は、俺がよくリフレッシュしたいときに来る場所なんですよ。」
2人でベンチに座り、話をしていると、自然とお互いのプライベートな話題にも踏み込むようになった。
「一ノ瀬さん、なんで経理を選んだんですか?」
「うーん、なんとなく、数字と向き合うのが好きだったからかな。…でも、本当はもう少しクリエイティブな仕事がしたかったかも。」
「へえ、意外ですね。でも、それも一ノ瀬さんらしいかも。」
弥生が少し考え込んでいると、拓海がふいに手を伸ばして彼女の髪に触れた。
「えっ?」
「ごめん、花びらがついてて。」
軽く触れただけなのに、心臓が跳ね上がるのを感じた。拓海の視線が、いつも以上に近く感じる。
その帰り道、拓海が唐突に言った。
「一ノ瀬さん、俺、本気なんです。」
「えっ…?」
「最初は隣人ってだけで気になったけど、一緒にいるうちに、あなたがどれだけ頑張ってるか、どれだけ優しいか、分かってきて…。気づいたら、あなたが誰よりも大事な存在になってた。」
拓海の真剣な表情に、弥生の心は揺れた。彼の言葉は真っ直ぐで、迷いのないものだった。
「でも、私…年上だし…。それに、こんなに人気者の工藤さんが、どうして私なんか…。」
「年齢なんて関係ないです。俺にとっては、一ノ瀬さんが一番特別です。」
その言葉に、弥生の頑なだった心が少しずつ解けていくのを感じた。
「考えさせて。」
それだけを伝え、弥生は家に戻った。だが、その夜、拓海の真剣なまなざしが頭から離れなかった。
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翌日、弥生が会社を出たところで、見覚えのある顔が待ち構えていた。
「弥生…久しぶりだな。」
元カレだった。彼の目には焦りが宿っており、明らかに常軌を逸しているように見えた。
「やめて、もう話すことなんてない。」
「そんなこと言うなよ。俺たちはやり直せるって!」
その時、後ろから声が聞こえた。
「弥生さん、帰りますよ。」
振り返ると、そこには拓海が立っていた。彼は弥生を守るように元カレと対峙すると、静かに言い放った。
「俺の彼女に何の用ですか。これ以上近づくなら、警察を呼びます。」
その毅然とした態度に、元カレは何も言えず、その場を去った。
その後、弥生は家で拓海と2人きりになり、静かに言った。
「ありがとう…本当に助かった。」
「いえ。すみません、彼氏のフリなんかして。でも、俺にできることは何でもします。だから、俺にそばにいることを許してください。」
拓海の言葉に、弥生は頷いた。彼の真剣な想いが、ついに自分の心を動かした瞬間だった。
「…私でいいの?」
弥生の不安を払拭するかのように、そっと抱きしめながら、
「一ノ瀬さんじゃなきゃダメなんです。」
顔を上げた弥生に、そっと口付けを交わした。
「これからは弥生さんって呼んで良いですか?」
エピローグ
休日の昼下がり、弥生の部屋で過ごす2人。キッチンで料理をしている弥生の背中に、拓海がそっと腕を回した。
「何してるの、邪魔だよ。」
「いいじゃないですか。俺、今幸せなんで。」
そう言って甘える彼の姿に、弥生は思わず笑ってしまった。年齢の壁も、過去のトラウマも、今はもう怖くない。彼となら、きっとどんな未来も乗り越えられる。
ふたりの未来は、これから始まったばかりだ。
Fin
最後までご覧いただき、ありがとうございました!
年下男子の甘さと大人の余裕が交錯する恋愛模様や強引だけど一途な年下紳士の告白の胸キュンラブストーリーをお届けできたらと思い、書きました。
次回作は、推し活とリアルな恋をテーマにした作品です!
お楽しみに♪
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